中古マンションの価値は、築年数だけで決まるわけではありません。 むしろ、近年は「どれだけ適切に管理されてきたか」が資産価値を左右する時代になっています。
しかし、管理状態は外から見ただけでは判断が難しく、買主はもちろん、管理組合自身でさえ「うちは本当に適切に管理できているのだろうか?」と不安を抱えることも少なくありません。
そんな課題を解決するために誕生したのが、マンション管理適正評価制度です。 2022年にスタートしたばかりの新しい制度ですが、今後は中古マンション市場において“管理の見える化”を進める重要な指標になると期待されています。
この記事では、制度の仕組みや評価項目、登録するメリット・デメリット、買主がどの程度重視すべきかなどを、できるだけわかりやすく丁寧に解説していきます。 これからマンション購入を検討している方、管理組合として制度登録を検討している方、不動産仲介として知識を深めたい方にとって、必ず役立つ内容です。
- これからマンション管理適正評価制度を登録検討している管理組合
- これから中古マンションの購入を検討している
- 不動産仲介として知っておきたい
マンション管理適正評価制度とは
参考ページ ⇒ マンション管理適正評価制度 公式HP
マンションの管理状態は、建物の寿命や住み心地、そして資産価値に直結します。 しかし、これまで日本には「管理状態を客観的に評価する全国共通の基準」が存在しませんでした。 そのため、買主は管理状態を判断しづらく、管理組合は適切な管理をしていても市場で評価されにくいという課題がありました。
こうした背景から誕生したのが、マンション管理適正評価制度です。 この制度は、マンションの管理状況を30項目でチェックし、6段階で評価。 その結果をインターネット上で公開することで、管理の透明性を高めることを目的としています。
制度開始からまだ数年ですが、今後は中古マンション市場において「管理の良し悪しを判断する重要な指標」として存在感を増していくでしょう。
2022年4月からマンション管理適正評価制度が開始した。
マンション管理適正評価制度は、2022年4月にスタートしました。 マンションの管理状態を客観的に評価し、買主にもわかりやすく見える化するための仕組みです。
評価は管理組合の判断で受けるもので、義務ではありません。 そのため、2025年時点でも登録件数は全国で約8,000件と、まだまだ少ない状況です。
評価は以下の6段階。
90~100点 特に優れている
70点~89点 優れている
50点~69点 良好
20点~49点 一部改善が必要
1点~19点 管理に問題があるが、情報開示あり
0点以下 管理不全の疑いあり
マンション管理適正評価制度ができた背景
マンションは建てたら終わりではなく、長期的な維持管理が欠かせません。 しかし、近年はマンションの老朽化と居住者の高齢化が同時に進行し、管理組合の運営が難しくなっているケースが増えています。
役員のなり手不足、修繕積立金不足、管理費滞納、計画修繕の遅れ…。 こうした問題が積み重なると、マンションの資産価値は大きく下がり、売却時にも不利になります。
国土交通省はこうした状況を受け、管理状態を見える化し、良質な管理を行うマンションが正当に評価される仕組みを整える必要があると判断しました。 その結果として誕生したのが、マンション管理適正評価制度です。
背景の詳細
2020年末時点で、日本の分譲マンションは675万戸以上。 居住人口は1,500万人を超えています。
しかし、築40年以上のマンションは今後急増し、
10年後には約2.2倍
20年後には約3.9倍
に増えると予測されています。
さらに、居住者の半数以上が60歳以上。 2025年には認知症高齢者が80万人を超える見込みもあります。
こうした「建物の高齢化」と「居住者の高齢化」が重なることで、
管理組合の財政悪化
役員のなり手不足
修繕計画の遅れ
といった問題が深刻化しています。
良質な管理が市場で評価されれば、区分所有者の管理意識が高まり、結果としてマンション全体の資産価値向上につながる。 この考え方が制度創設の大きな理由です。
管理組合側、居住者側、買主側、それぞれのメリットとデメリット
制度が始まったばかりの頃は、「登録する意味はあるの?」「買主は本当に気にするの?」といった声も多く聞かれました。 しかし、制度の目的や評価項目を理解すると、管理組合・居住者・買主それぞれにとってメリットがあることが見えてきます。
もちろん、制度登録には費用や手間がかかるため、デメリットがゼロというわけではありません。 ここでは、立場ごとにメリット・デメリットを整理し、制度をどう活用すべきかを考えていきます。
管理組合・居住者のメリット
第三者評価により、管理状態の良さを客観的に証明できる
売却時に有利になりやすい
管理の透明性が高まり、組合運営の改善につながる
管理会社とのコミュニケーションがスムーズになる
「管理が良い」と口で説明するだけでは伝わりにくい部分を、制度が補ってくれます。
管理組合・居住者のデメリット
毎年5,500円の費用がかかる
登録が進むと、未登録マンションが“管理が悪いのでは?”と思われる可能性
現時点では登録数が少ないため、未登録だからといって不利になることはほぼありません。
買主のメリット
管理状態の良し悪しを客観的に判断できる
築古マンションでも安心材料が増える
不動産会社任せにせず、自分で管理状態を確認できる
特に築古マンションでは、管理状態が資産価値に直結するため、評価があると安心感が大きくなります。
買主のデメリット
特になし
制度があることで買主が不利益を被ることはありません。
評価項目30個
マンション管理適正評価制度では、管理状態を30項目に分けてチェックします。 この項目は、管理組合の運営状況から建物設備の点検、修繕積立金の状況、防災対策まで多岐にわたります。
一見すると難しそうに見えますが、実は「管理が行き届いているマンションなら自然とクリアしている項目」が多く、特別なことを求められるわけではありません。
ここでは、30項目の概要をわかりやすく整理し、どの項目が特に重要なのか、どの項目がマンションによって差が出やすいのかを解説します。
下記は、管理適正評価の30項目を簡易的に表にしたものです。
※実際に検討する際は公式HPをご確認ください。
下記表、左縦列は評価項目、真ん中縦列はその内容、右縦列については、私の独断と偏見による〇、△、×をつけています。
「〇」は管理会社へ管理全部委託のマンションであれば実施されている確率が高い
「△」はマンションやエリアによって実施されているか変動する。
「×」は実施しているマンションはあまりないと思われる。
という独断と偏見で評価をしました。
特に「△」の評価項目は実際に私が買主に管理状態がの良し悪しを説明する際に説明することが多い項目です。
| 評価項目 | 評価内容 | 偏見評価 |
| 1 管理体制 | ||
| 管理者等の設置 | 管理者等及び監事が選任されているか。 | 〇 |
| 集会(総会)の開催 | 年1回以上開催されているか。 | 〇 |
| 総会議事録 | 直近5年分の総会議事録が保管されているか。 | 〇 |
| 管理規約の有無 | 規約原本又は現に有効な規約があるか。 | 〇 |
| 管理規約への規定の有無 | 管理計画認定基準項目に掲げられている内容が管理規約に規定されているか。 | 〇 |
| 規約改正状況 | 標準管理規約に準拠して、主要な改正項目が規定されているか。 | △ |
| 2 建物・設備 | ||
| 特定建築物定期調査 | 実施状況及び報告書の保管があるか。 | 〇 |
| 建築設備定期検査 | 実施状況及び報告書の保管があるか。 | 〇 |
| 昇降機定期検査 | 実施状況及び報告書の保管があるか。 | 〇 |
| 専用水道定期水質検査 | 実施状況及び報告書の保管があるか。 | △ |
| 簡易専用水道管理状況検査 | 実施状況及び報告書の保管があるか。 | △ |
| 貯水槽の清掃 | 実施状況及び報告書の保管があるか。 | △ |
| 浄化槽の保守点検、清掃、定期検査 | 実施状況及び報告書の保管があるか。 | △ |
| 消防用設備等点検 | 実施状況及び報告書の保管があるか。 | 〇 |
| 自家用電気工作物定期点検 | 実施状況及び報告書の保管があるか。 | △ |
| 長期修繕計画 | 長期修繕計画が作成されているか。 要件に準拠しているか。 | △ |
| 直近5年間の共用部分の修繕等の履歴情報 | 直近5年間の共用部分の修繕等の竣工図書の保管があるか。 竣工図書も保管できているか。 | △ |
| 3 管理組合収支 | ||
| 管理費と修繕積立金の区分経理 | 管理費会計と修繕積立金会計の区分経理がされているか。 | 〇 |
| 管理費会計収支 | 修繕積立金会計から他の会計(管理費会計等)への充当がされていないか。 | △ |
| 修繕積立金会計収支 | 修繕積立金の資金計画の設定 (均等積立方式の場合) □計画期間の推定工事費よりも積立金累計額の方が多い+管理組合の年度収入額が長期修繕計画上の年度収入どおりに徴収 □計画期間の推定工事費よりも積立金累計額の方が多い+管理組合の年度収入額が長期修繕計画上の年度収入以下 等、他にも複数の評価項目がある。 | △ |
| 管理費滞納額 【戸数】 | 直前の事業年度の終了の日時点における、管理費の滞納発生状況 | △ |
| 管理費滞納額 【期間】 | 直前の事業年度の終了の日時点における、管理費の滞納住戸における滞納期間及びその対応状況 | △ |
| 管理費滞納額 【滞納率】 | 直前の事業年度の終了の日時点における、管理費の3ヶ月以上の滞納状況 | △ |
| 修繕積立金滞納額 【滞納率】 | 直前の事業年度の終了の日時点における、修繕積立金の3ヶ月以上の滞納状況 | △ |
| 修繕積立金の額 | 修繕積立金の額が著しく低額でないか。 | △ |
| 4 耐震診断関係 | ||
| 耐震性(耐震診断の実施) | 新耐震基準の建物であえれば問題ないが、旧耐震基準の年代に建築されている マンションの場合が評価項目アリ。 | △ |
| 5 生活関連 | ||
| 緊急対応 | 設備等の警報発報による緊急対応の体制 | △ |
| 消防訓練の実施状況 | 法令上の義務に基づく当該事業年度内の消防訓練の実施状況 | × |
| 名簿の整備状況 | 区分所有者及び居住者名簿を備えているか。 | △ |
| 防災対策 | 災害への対策が講じられているか。(全8項目) | △ |
買主としてどれほど気にするべきか
中古マンションを購入する際、多くの人が気にするのは「立地」「価格」「築年数」。 しかし、実際に住んでみて後悔する理由の多くは「管理状態の悪さ」です。
エントランスが荒れている、修繕積立金が不足している、管理組合が機能していない…。 こうした問題は、内見だけでは見抜けません。
だからこそ、マンション管理適正評価制度は買主にとって大きな助けになります。 登録されていれば管理状態が良い可能性が高まり、登録されていなくても「なぜ登録していないのか?」を考えるきっかけになります。
買主が気にすべきポイント
登録されていれば安心材料としてプラス
登録されていない場合でも、管理状態が悪いとは限らない
評価項目をチェックすることで、内見時の確認ポイントが明確になる
制度はあくまで“判断材料のひとつ”。 しかし、管理状態を見極める上で非常に有効な情報源です。
まとめ
マンション管理適正評価制度は、まだ始まって数年の新しい制度ですが、今後の中古マンション市場において確実に重要性が高まっていく仕組みです。
これまで曖昧だった「管理状態」を客観的に評価し、買主にもわかりやすく公開することで、管理の良いマンションが正当に評価される時代が始まりつつあります。
管理組合にとっては、適切な管理を行っていることを外部に示す大きなメリットがあり、売却時の資産価値向上にもつながります。 買主にとっては、管理状態を判断するための強力な指標となり、安心して中古マンションを選べるようになります。
もちろん、制度登録には費用や手間がかかりますし、登録していないマンションが必ずしも管理が悪いわけではありません。 しかし、制度が普及していけば、管理の透明性が高まり、マンション全体の価値向上につながることは間違いありません。
中古マンションを購入する方は、まず制度に登録されているかをチェックし、登録されていない場合でも評価項目を参考に管理状態を確認することをおすすめします。 管理組合としては、今後の資産価値維持のためにも、制度登録を前向きに検討する価値があります。
マンションの価値は、築年数だけでは測れません。 これからは「どれだけ大切に管理されてきたか」が、より重要な判断基準になっていくでしょう。




















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