マンションを購入するとき、多くの人は「ここで長く暮らしていくんだろうな」と、未来の生活を思い描きながら契約書にサインをします。 中には、「終の棲家としてここを選ぶ」と心に決めて購入する人もいますよね。
しかし、どれだけ愛着を持って住んでいても、マンションは“建物”である以上、いつか老朽化し、修繕や建て替えといった大きな選択を迫られる可能性があります。 特に築年数の経ったマンションを購入する場合、「建て替えのリスク」や「どれくらい現実的なのか」を知っておくことは、後悔しないための大切なポイントです。
この記事では、国のデータをもとに、実際にどれくらい建て替えが行われているのか、なぜ建て替えが進まないのか、そして旧耐震マンションを買うべきかどうかまで、解説していきます。
あなたがこれからマンションを購入する際に、安心して判断できるように。 そして、築古マンションの魅力とリスクを正しく理解できるように。 そんな思いを込めて、解説していきます。
- 築古中古マンションの購入を検討している。
- 建て替えについて知りたい
マンションの建て替えは何件行われているのか
「マンションの建て替えって、実際どれくらい行われているの?」 これは築古マンションを検討する人が必ず抱く疑問です。
ニュースでは「老朽化マンションの増加」や「建て替えの必要性」が取り上げられますが、実際のところ、建て替えはとてもハードルが高く、簡単には進みません。
建物が古くなれば建て替えればいい、という単純な話ではなく、そこには法律、住民の合意形成、莫大な費用など、さまざまな壁が立ちはだかっています。
国土交通省のデータを見ると、建て替えがどれほど“レアケース”なのかがよくわかります。
マンションは全国に何百万戸も存在しますが、その中で建て替えに至ったものはごく一部。 つまり、築古マンションを買ったからといって「すぐ建て替えになるかも」と心配しすぎる必要はありませんが、一方で「建て替えが必要な状態でも進まない」という現実もあります。
ここでは、まず建て替えの実績を数字で確認し、現状をしっかり把握していきましょう。



国土交通省の「マンション建替え等の実施状況」によると、 2004年〜2024年の20年間で建て替えが実施されたのは累計297件(24,000戸)。
マンションストックは2023年時点で約704万戸。 この膨大な数の中で、建て替えに至ったのはほんの一握りです。
つまり、建て替えは「めったに起きないイベント」であり、 逆に言えば「必要でも進まないケースが多い」ということでもあります。



マンションストック総数として、2023年時点で約704万戸です。新築マンションの供給は増え続ける為、ストックは毎年増え続けます。
これが空き家問題に繋がってきます。
本来であれば、古くなった建物を解体して、建て替えることが理想的な状態です。
旧耐震基準ストック戸数
築古マンションを語るうえで欠かせないのが「旧耐震基準」の存在です。 1981年に耐震基準が大きく改正され、それ以前に建築確認を受けた建物は“旧耐震”と呼ばれます。
旧耐震マンションは、地震に対する安全性が現行基準より低い可能性があるため、建て替えや耐震改修の議論が起こりやすいカテゴリーです。 しかし、旧耐震だからといってすぐ危険というわけではなく、実際には多くの旧耐震マンションが今も普通に使われています。
では、旧耐震マンションはどれくらい残っているのでしょうか? そして、そのうちどれくらいが建て替えられているのでしょうか? 数字を見ると、建て替えの難しさがより鮮明に浮かび上がってきます。
旧耐震マンションは約103万戸も存在する
全国のマンションストックのうち、 旧耐震基準のマンションは約103万戸。
本来であれば、老朽化した旧耐震マンションが建て替えられれば、 新築供給が増えてもストック総数は増えず、空き家問題の解決にもつながります。
建て替えられた旧耐震マンションはわずか2.3%
24,000戸(建て替え実績) ÷ 103万戸(旧耐震ストック) = 約2.3%
つまり、 旧耐震マンションの97%以上は建て替えられていない ということです。
建替えが進まない理由
「老朽化して危険なら建て替えればいいのに」 そう思う人は多いでしょう。
しかし、マンションの建て替えは“住民全員の人生”が関わる大きな決断です。 費用、生活環境、将来の資産価値、そして住民の価値観の違い…。 これらが複雑に絡み合い、建て替えは簡単には進みません。
特に、区分所有という仕組みの中では、 「一人の反対が全体を止めてしまう」 という状況が起こりやすく、合意形成は非常に難しいものです。
ここでは、建て替えが進まない主な理由を、ひとつずつ丁寧に見ていきます。
理由①:5分の4以上の賛成が必要という高すぎるハードル
建て替えには、 区分所有者および議決権の5分の4以上の賛成 が必要です。
100世帯なら80世帯の賛成。 200世帯なら160世帯の賛成。
世帯数が多いほど、合意形成は困難になります。
理由②:自己負担が数千万円単位になることも
修繕積立金だけでは建て替え費用は賄えません。 多くのケースで、 1,000万円以上の自己負担 が発生します。
さらに、建て替え期間中の仮住まい費用も自己負担。 高齢者や低所得層にとっては大きな負担です。
理由③:高齢者は「今の環境を変えたくない」
長年住んできた家を離れたくない。 引っ越しの負担が大きい。 ローンを組めない。
こうした理由から、高齢者は建て替えに反対する傾向があります。
理由④:建て替えると今より面積が小さくなる可能性がある
建築基準法が厳しくなったことで、 建て替えると延床面積が減る=部屋が狭くなる というケースがあります。
これでは住民が賛成しづらいのも当然です。
区分所有法の歴史
マンションの建て替えを考えるとき、多くの人が「なぜこんなに話が進まないのだろう?」と疑問を抱きます。 しかし、その背景には“マンションという不動産の特殊性”があり、さらに“法律の歴史”が深く関わっています。
マンションは、一つの建物を複数の人が所有するという、非常に独特な仕組みで成り立っています。 そのため、建物の修繕や建て替えといった大きな決定をする際には、誰がどのように決めるのか、どこまでの権限があるのか、そしてどれほどの賛成が必要なのか――こうしたルールが明確でなければ、トラブルが起きてしまいます。
区分所有法は、まさにそのルールを定めるために生まれた法律です。 1962年の制定から何度も改正され、時代に合わせてマンションの管理や建て替えの仕組みが整えられてきました。
ここでは、その歴史をたどりながら、建て替えがどのように制度化されてきたのかを、わかりやすくお話ししていきます。
昭和37年 区分所有法成立
マンションという住まい方が一般化する前の時代。
当時は「共用部分の変更は全員一致」が原則で、建て替えの規定すらありませんでした。
今では考えられないほど、建て替えのハードルは“無限大”だったと言えます。
昭和58年 区分所有法改正
マンションが増え始め、老朽化も見え始めた時代。
ここで初めて「建て替えは5分の4以上の賛成で可能」というルールが誕生します。
これにより、全員一致という不可能に近い条件から、現実的なラインに引き下げられました。
平成12年 区分所有法改正
マンション管理士制度が創設され、管理の質を高める方向へ舵が切られます。
建て替えだけでなく、日常の管理の重要性が社会的に認識され始めた時期です。
平成14年 区分所有法改正
建て替えに関する「過分の費用要件」が削除され、建て替えの議論がより進めやすくなりました。
同年にはマンション建替法も制定され、建て替えの制度が大きく前進します。
平成14年 マンション建替えの円滑化等に関する法律(マンション建替法)
マンション建替えの円滑化等に関する法律(マンション建替法) 平成14年成立、施工
平成25年 耐震改修促進法 改正
耐震改修に係る決議要件の緩和等
平成26年 マンション建替えの円滑化等に関する法律(マンション建替法)改正
売却制度、容積率の緩和の特例等
区分所有法の建替えとマンション建替法の建替えの違い
参考資料:国土交通省発行:マンション建替え関連制度の概要
参考URL:国土交通省 マンション建替え等・改修について



マンション建替えの円滑化等に関する法律(マンション建替法)
区分所有法が“建て替えのルール”を定めた法律だとすれば、 マンション建替法は“建て替えを円滑に進めるための仕組み”を整えた法律です。
マンションの老朽化が社会問題化し始めた2000年代、 「このままでは危険なマンションが増え続ける」 という危機感から、国は建て替えを後押しする制度を整えました。
建替組合の設立、権利変換、反対者の権利買い取り、一括登記など、 建て替えを現実的に進めるための仕組みが盛り込まれています。
ここでは、その内容をわかりやすく紹介します。
参考資料:国土交通省発行:マンション建替え関連制度の概要
マンション建替組合の設立
区分所有者の4分の3以上の賛成で設立可能。 都道府県知事の認可が必要です。
権利変換に関する仕組み
建て替え後の新しいマンションに、どのように権利を移すかを明確にする仕組み。
これがあることで、建て替え後の混乱を防げます。
組合による権利の買い取り
建て替えに反対する人の区分所有権を、組合が“時価で”買い取ることができます。
これにより、少数の反対で建て替えが止まるのを防ぎます。
組合が行う一括登記
個別に登記を行うと膨大な手間と費用がかかるため、組合が一括で処理できるようになっています。
危険なマンションの建て替え
耐震性が著しく不足している場合、行政から除却の指導が入ることがあります。
平成26年のマンション建替法の改正
耐震性不足の認定を受けたマンションが建替えにより、新たに建築されるマンションで、一定の敷地面積を有し、市街地環境の整備・改善に資するものについて、特定行政庁の許可により容積率制限を緩和できることとなりました。
マンション敷地売却制度
主な利用シーン
- 建て替えても同規模以上のマンション水準を実現できない
- 要求される水準を満たせる場合でも、各区分所有者の建替え費用負担が重い
デベロッパー等の買受人に敷地事マンションを売却する方法です。区分所有者のメリットとして
- 再建築後にマンションに入居するか、住み替えるかを選ぶ事ができる。
- 区分所有者の合意形成が比較的容易である
- 新たなマンションを建築する場合は容積率の緩和特例がある。
旧耐震は買うべきではないのか 建て替えのメリット・デメリット
築古マンションを検討する人が必ず悩むのが、 「旧耐震マンションは買っても大丈夫なのか?」 という問題です。
旧耐震=危険 というイメージを持つ人も多いですが、実際には立地や管理状況によって大きく評価が変わります。
特に駅近などの好立地物件は、建て替えが実現した場合に大きな恩恵を受けられる可能性があります。 一方で、建て替えには莫大な費用がかかり、精神的・肉体的な負担も無視できません。
ここでは、旧耐震マンションのメリット・デメリットを整理し、どんな人に向いているのかを考えていきます。
■ メリット
建て替え後に面積が増える可能性
建て替え後の資産価値が大きく上がる
好立地なら将来のリターンが期待できる
■ デメリット
建て替え費用が数千万円単位で発生する可能性
引っ越しや仮住まいなど、生活への負担が大きい
建て替えが必ず実現するとは限らない
まとめ
マンションの建て替えは、単なる建物の問題ではなく、そこに暮らす人々の生活、価値観、経済状況が複雑に絡み合う大きなテーマです。 老朽化が進んだマンションが増える一方で、建て替えが進んだケースは全体のわずか2.3%。 この数字が示すように、建て替えは“必要でも進まない”という現実があります。
しかし、国は制度を整え、建て替えのハードルを少しずつ下げようとしています。 耐震性が不足しているマンションは、今後「除却認定」によって建て替えが進む可能性も高まっています。 特に駅近などの好立地の旧耐震マンションは、建て替え後に大きな価値向上が見込まれるケースもあり、購入するメリットが十分にある物件も存在します。
大切なのは、築古マンションを「危険だから避ける」と単純に判断するのではなく、 立地、管理状況、修繕積立金、住民構成、将来の建て替え可能性など、複数の視点から総合的に判断することです。
マンションは“買って終わり”ではなく“買ってからが本当のスタート”。 この記事が、あなたが安心してマンション選びを進めるための一助となれば嬉しいです。
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