不動産を購入するとき、物件価格以外にかかる「諸費用」の存在に驚く方は少なくありません。
登記費用・火災保険・仲介手数料・銀行の手数料・引越し代・リフォーム費用など、合計すると物件価格の5〜10%程度になることが多く、3,000万円の物件を買う場合には150万円〜300万円程度の諸費用が発生することがあります。
「こんなにかかるとは思わなかった」という声は、不動産購入後の後悔として非常に多いものの一つです。
しかし、諸費用の中には「絶対に削れないもの」と「工夫次第で大きく節約できるもの」があります。この違いを知らずに全てを言われるがままに支払ってしまうと、本来必要のない費用まで払うことになってしまいます。
私がこれまで不動産の現場に携わってきた経験から言うと、諸費用の節約を意識するだけで、数十万円単位でコストを削減できるケースは珍しくありません。
この記事では、節約できる可能性がある費用に絞って、具体的な節約方法と注意点をお伝えします(不動産購入の諸費用内訳や相場を解説 物件価格ごとの諸費用一覧(早見表))。
💡中古マンション購入でよくある失敗・後悔50選|不動産屋が教える買ってはいけない物件
- 不動産購入の諸費用を少しでも節約したい人
- 不動産購入を検討していて、費用の全体像を把握したい
節約できる諸費用①:火災保険

火災保険は、購入時に必ず加入が求められる保険ですが、プランの選び方次第で費用を大きく変えることができます。
「不動産会社や保険代理店が提案するプランをそのまま契約してしまう」という方が非常に多いですが、これが諸費用を無駄に増やしてしまう大きな原因の一つです。
火災保険は、自分のエリアと状況に合わせて必要な補償だけを選ぶことが、節約への第一歩です。
火災保険の現状と一括払いのメリット
かつては20年一括払いプランがあり、長期一括払いで大幅に安くなるという特徴がありました。その後10年一括払いが最長となり、現在では5年一括払いが最長のプランになっています。
5年一括払いを選ぶことで、年払いや月払いより割安になることが多いです。相場としては5万円〜10万円程度のプランに設定する方が多いです。
必要のない補償は削ることが重要
保険代理店から提案されるプランは、多くの場合「最大限の補償が付いたMAXプラン」であることが多いです。担当者の立場から見ると、補償が多いほど保険料が高くなり、代理店の収益も増えるため、自然とそうなりやすい構造があります。
しかし、火災保険で必要な補償はエリアによって大きく異なります。
地盤が強いエリアに住む場合は、地震保険を外すという選択肢があります。逆に、洪水浸水リスクが高いエリアでは水害補償を手厚くする必要があります。
「全部付けておけば安心」という発想は、不要な費用を払い続けることになります。ハザードマップで自分のエリアのリスクを確認した上で、本当に必要な補償だけを選ぶことが節約につながります。
地震保険も最大5年一括払いで、相場は5万円〜10万円程度です。
ネット損保を活用する
楽天損保やソニー損保などのネット損保を利用することで、保険料を安く抑えられる可能性があります。
対面の保険代理店を通さないため、その分のコストが削減されていることが多いです。補償内容を自分で確認・選択する手間はありますが、その手間に見合った節約効果が期待できます。
節約できる諸費用②:ローン事務手数料(不動産会社に支払うもの)
これは前章でも詳しく説明しましたが、諸費用の節約という観点でも重要な項目です。
「ローン事務手数料」「ローン代行手数料」「ローン斡旋手数料」といった名目で、不動産会社に支払う費用が請求されることがあります。
かつては10万円〜15万円という金額を請求する会社が多くありましたが、現在は請求しない会社が増えてきています。しかし、まだ諸費用の明細に含まれているケースがあります。
国土交通省の見解では、こうした手数料の請求は業法違反の可能性があるとされています。諸費用の明細にこうした項目が含まれていた場合は、その会社への依頼を再考することをおすすめします。
支払わなくていい費用を把握していることが、不要な出費を防ぐ最も効果的な方法です(ローン代行手数料とはなんなのか?違法性のある不動産屋に支払うお金について)。
節約できる諸費用③:仲介手数料
仲介手数料は法律で上限が定められており、その計算式は以下の通りです。
(物件価格×3%+6万円)×消費税1.1
具体的な金額の例として、3,000万円の物件では約105.6万円、4,000万円の物件では約138.6万円になります。
この仲介手数料は、不動産会社によって設定が異なります。法定上限より低く設定している会社、条件によっては無料にしている会社も存在します。
ただし一点注意が必要です。仲介手数料が安いということは、その分の収益が削られるということであり、サービスの質に影響が出る可能性があります。「安ければいい」という判断だけでなく、担当者の質や会社の信頼性も合わせて判断することが大切です。
複数の不動産会社の仲介手数料を比較してみることは、節約への有効なアプローチです(仲介手数料無料の不動産会社ランキング!仲介手数料が無料にできるからくりとは?)。
節約できる諸費用④:銀行に支払う保証料・事務手数料
住宅ローンを組む際に、銀行に支払う保証料または事務手数料が発生します。
一般的には借入額の2.2%がかかります。3,000万円を借りる場合には66万円、4,000万円なら88万円という大きな金額になります(わかりやすく解説!変動金利と固定金利と元利均等金利と元金均等金利の違い!)。
金利上乗せで手数料を大幅に削減する方法
一部の銀行では、この保証料・事務手数料を大幅に削減する代わりに、金利を0.2%上乗せするという選択肢を提供しています。
例えば、66万円の手数料をゼロまたは数万円に抑える代わりに、金利が0.2%高くなるという仕組みです。
この選択が得かどうかは、借入期間によって変わります。短期間での完済を考えている方や、繰り上げ返済を積極的に行う予定の方には、手数料を削減する方法が有利になることがあります。逆に、35年フルで借り続ける予定の方は、金利の上乗せによる総支払額の増加が手数料削減のメリットを上回ることがあります。
自分の返済計画に合わせて、どちらが有利かを数字で比較することをおすすめします。
節約できる諸費用⑤:頭金を増やすことによる節約
頭金を増やすことで、借入額が減り、銀行に支払う手数料も減少します。
頭金100万円で借入額が100万円減ると、銀行手数料(借入額の2.2%)が22,000円削減されます。頭金を増やせば増やすほど、銀行に支払う手数料が連動して下がります。
直接的な節約効果としては大きくないように見えますが、借入額が減ることで月々の返済額も下がり、長期的な総支払額の削減につながります。
購入までに少し時間がかかっても、頭金を増やしてから購入することは、長期的な家計の安定という観点で非常に合理的な判断です(マンション購入で頭金0円の仕組みとは?似た言葉「初期費用・手付金・頭金」について解説)。
節約できる諸費用⑥:全額現金購入の場合の大幅節約
これは限られた方にしか当てはまりませんが、物件代金を全額現金で支払う場合の節約効果は非常に大きいです。
登記費用のうち抵当権設定費用が不要になります。これは物件価格によりますが、15万円〜30万円程度の削減になります。
銀行に支払う手数料が丸ごと不要になります。借入額によっては50万円〜300万円という大きな削減効果があります。
銀行と契約する金銭消費貸借契約の印紙代も不要になります。5,500円〜6万円程度の削減です。
合計すると、数百万円レベルでの諸費用削減が可能になります。もちろん、全額現金で購入できる方は限られますが、手持ち資金に余裕がある場合は、住宅ローンを組まない選択も検討に値します(中古マンションを現金一括購入するメリット8選とデメリットを解説!)。
節約できる諸費用⑦:引越し費用
引越し費用は、時期と業者選びによって大きく変わります。
繁忙期(3月・4月・GW・お盆・年末年始)に引越しを依頼すると、通常料金より高くなります。閑散期(5〜2月の平日)を選ぶことで、費用を大幅に抑えられます。
また、引越し業者によって料金は大きく異なります。同じ条件でも、業者によって10万円以上の差が出ることも珍しくありません。必ず複数の業者から見積もりを取り、比較することが重要です。
一括見積もりサービスを使うと、複数社から同時に見積もりが取れるため、比較の手間が省けます。引越し費用の節約は、手間をかける価値が十分にある項目です(中古マンション購入で住宅ローンに引越し費用を組み込むことができるのか?)。
節約できる諸費用⑧:リフォーム費用
リフォームを予定している場合、依頼する会社によって100万円以上の費用差が生じることがあります。
「この会社に頼みたい」という気持ちがあっても、まずは複数社から見積もりを取ることを必ず行ってください。最低3社以上から見積もりを取り、内容と価格を比較した上で判断することが、リフォーム費用の無駄を防ぐ基本です。
「今すぐ決めないと損」「他の会社の見積もりを取る前に決めてしまいましょう」という営業トークには乗らないことが重要です。複数の見積もりを取った上で判断するのは、消費者として当然の権利です(中古マンションを買ってリノベーションする際の注意点 失敗しない方法 徹底解説)。
節約できる諸費用⑨:不動産取得税の減税
不動産を取得した際にかかる不動産取得税は、条件によって大幅に減税されます。
旧耐震基準の物件を購入した場合、この減税が適用されないため、20万円〜50万円程度の不動産取得税が発生します。
新耐震基準(1981年以降に建築確認を取得)かつ、課税対象面積が50㎡を超えている物件であれば、ほぼゼロに近いレベルまで減税されます。
ただし、新耐震基準の物件は旧耐震基準の物件より価格が数百万円高いことが多いです。取得税の節約と物件価格の差を比較した上で、トータルで判断することが大切です。
節約できる諸費用⑩:固定資産税・都市計画税の清算金
固定資産税・都市計画税(略して「固都税」)は、毎年1月1日時点の所有者に対して請求されます。
年の途中で所有者が変わる場合、年間分を日割りで計算して清算します。
この清算において、起算日を1月1日とした場合、決済日を12月31日に設定することで、買主の負担が1日分(わずか数百円程度)になります。
具体的な例で見てみましょう。年間の固都税が12万円の場合、1月1日に決済すれば買主が12万円全額を負担します。しかし12月31日に決済すれば、12万円÷365日×1日=328円が買主の負担になります。
決済日の設定によってこれほどの差が生まれることは、あまり知られていません。年末に決済が可能な状況であれば、担当者と相談してみる価値があります。
まとめ
不動産購入の諸費用には、削れないものと削れるものがあります。この違いを知っているかどうかで、数十万円単位の差が生まれることがあります。
この記事でお伝えしたかった最も大切なことは、「諸費用は全て言われるがまま支払うものではない」ということです。
火災保険はエリアに合った補償だけを選ぶ、不動産会社に支払うローン代行手数料は支払わない、仲介手数料は複数の会社を比較する、引越し費用は複数社から見積もりを取る、リフォーム費用は3社以上で比較する。
これらの節約を全て完璧に実行することは難しいかもしれませんが、意識するだけで確実に費用を抑えることができます。
購入のタイミングや状況に合わせて、できる節約から取り組んでみてください。数十万円の節約が、引越し後の生活の余裕につながります。
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