不動産を購入するとき、多くの方が「どんな物件を買うか」に全精力を注ぎます。
立地は?築年数は?管理状態は?価格は相場と比べてどうか?
もちろん、これらはすべて大切な視点です。でも、私が10年以上不動産の現場に携わってきた経験から言うと、実は物件選びと同じくらい、いや、場合によってはそれ以上に重要なことがあります。
それが「誰に担当してもらうか」です。
同じ物件を紹介されたとしても、担当者の質によって、あなたが受け取る情報の量と質はまったく変わります。懸念点をきちんと伝えてくれる担当者と、表面的な説明しかしない担当者とでは、購入後の満足度に大きな差が生まれます。
これは大手だから安心、零細だから不安、という単純な話でもありません。大手であっても、担当者一人ひとりの資質は大きく異なります。有名な会社に所属していても、あなたの利益より自分の売上を優先する担当者は存在します。逆に、小さな会社でも、誠実に向き合ってくれる素晴らしい担当者がいます。
この記事では、不動産業界の現場で実際に起きていることをできる限り包み隠さずお伝えしながら、「良い担当者とはどんな人か」「どうやって見極めるか」について、具体的にお話しします。
中古マンションの購入を検討しているなら、物件を探す前に、ぜひ一度読んでおいてください。担当者選びの視点が変わるはずです。
💡中古マンション購入でよくある失敗・後悔50選|不動産屋が教える買ってはいけない物件
💡不動産会社・担当者の選び方ガイド|失敗しない中古マンション購入のための完全版
- これから中古マンション購入を検討している人
- 不動産担当者の選び方がわからない人
- 担当者によってどれほど結果が変わるのかを知りたい人
- 信頼できる担当者の見極め方を知りたい人
現代は正直不動産は当たり前の時代である

不誠実な不動産担当者に当たると何が起きるのか
「不誠実な担当者」と聞いて、どんな人を思い浮かべますか?
嘘をつく人、欠陥を隠す人、そんなイメージを持つ方が多いかもしれません。
でも実際には、あからさまに嘘をついたり、意図的に欠陥を隠したりする担当者は、今の時代はほとんどいません。コンプライアンスへの意識が高まっており、大手不動産会社は特に、法律的なリスクを避けるための研修や仕組みが整っています。
では、問題はどこにあるのか。
それは「言わなければいけないことは言う。でも、それ以上は言わない」という担当者の存在です。
説明義務を果たしているように見えて、実はあなたが本当に必要としている情報を伝えていない。懸念点を「一応伝えた」という既成事実を作るだけで、その懸念がどれほどリスクになるかを深く説明しない。
こういう担当者に当たってしまうと、購入後に「こんなことになるとは思わなかった」という後悔に繋がりやすいのです。
具体的にどんな問題が起きるか、整理しておきましょう。
購入後に予想もしていなかったトラブルが発生することがあります。売買契約書の内容に事実と異なる記述が含まれているケースもあります。物件の懸念点についてはっきり説明せず、「言いました」という形だけ残して終わりにする担当者もいます。契約後に新たな事実が発覚しても、適切に対応してもらえず揉める可能性があります。最悪の場合、購入後すぐに売却せざるを得ない状況になることもあります。
どれも「起きたら大変」という出来事ばかりです。そしてこれらの多くは、最初の担当者選びで防げた可能性があります。
現代は「正直不動産」が当たり前の時代
少し前まで、不動産業界は「情報の非対称性」が大きい業界でした。業者側が圧倒的に情報を持っており、消費者はその情報を信じるしかなかった時代です。
しかし今は違います。
インターネットの普及により、物件情報は消費者側でも調べられるようになりました。口コミやレビューがすぐに広まる時代になり、不誠実な対応をした会社はすぐに評判が下がります。大手不動産会社はコンプライアンス部門を設け、法律的なリスクを管理するようになっています。
法的には、今の不動産業界は以前より遥かに透明性が高くなっています。重要事項説明義務も厳格になり、説明しなければいけない項目はきちんとカバーされるようになっています。
ただし、「法律的に問題ない説明」と「あなたにとって本当に必要な説明」は、必ずしも一致しません。
法律が定めている説明義務の範囲を超えて、「この懸念がどういう結果をもたらすか」まで丁寧に伝えてくれる担当者は、実はまだそれほど多くないのが現実です。
法的な安全性と、担当者としての質は別物です。この視点を持って担当者を選ぶことが、満足のいく不動産購入につながります。
「想像力を働かせた懸念」を説明できるかどうかが、担当者の質を分ける
では、良い担当者と普通の担当者の違いは、具体的にどこで見分けられるのか。
私がもっとも重要だと考えているのが、「想像力を働かせた懸念の説明ができるかどうか」です。
懸念点をそのまま伝えるのは、どの担当者でもやっています。でも、その懸念が「あなたにとって具体的にどんなリスクをもたらすか」まで掘り下げて説明できる担当者は、経験と誠実さの両方を持っています。
2つの実例で比較してみます。
実例①:土地面積が減っている物件
まず、中古マンションの土地が一部他者に売却されており、建築当初より土地面積が減ってしまっている物件の例です。
こういった物件は、立地が良く価格も魅力的であれば、条件次第では検討する価値があることもあります。ただし、この「土地面積が減っている」という事実は、単体で見るより、その先にどんなリスクがあるかを知ることの方が重要です。
普通の担当者はこう言います。
「この物件の懸念点として、土地の一部が売却され、建築当初より土地面積が減っています」
事実は伝えています。でも、それだけです。
想像力を働かせた担当者はこう言います。
「この物件は、土地の一部が売却されて面積が減っています。これによって大きく2つのリスクがあります。まず住宅ローンがほぼ通りません。仮に通ったとしても金利が極端に高くなり、長期的な総支払額が、懸念のない物件を買う場合と変わらなくなる可能性があります。以前は2社ほどの金融機関が審査を通していましたが、審査基準の変更でそれも難しくなりました。次に、将来の売却時にも同じ問題が起きます。次の買主も同じローンの壁にぶつかるため、売りにくい物件になります。さらに、建築当初から土地面積が減っているため、行政指導が入った際に建て替えを命じられる可能性もゼロではありません」
どちらが、あなたの判断に役立つ情報を伝えているか、一目瞭然です。
懸念を伝えることは義務かもしれませんが、その懸念があなたの人生にどんな影響を与えるかまで伝えることは、担当者としての誠実さと経験値の表れです。
実例②:修繕積立金の借入がある物件
次に、マンションの管理状態に関する例です。大規模修繕の際に修繕積立金が不足し、金融機関から借入をしたという物件はよくあります。
普通の担当者はこう言います。
「この物件は4年前の大規模修繕の際に、修繕積立金を金融機関から借入しています」
これも事実は伝えています。しかし、これを聞いてあなたはどう判断しますか?「ふーん、そうなんだ」で終わってしまいませんか?
想像力を働かせた担当者はこう言います。
「4年前の大規模修繕で修繕積立金を借入しています。現時点では値上げの予定は表に出ていませんが、返済のために将来的に修繕積立金の値上げを検討せざるを得ない可能性があります。他のマンションの事例から見ると、値上げ幅は月額500円から5,000円程度が多いですが、状況によっては1万円以上になるケースもあります。購入後に毎月の負担が増える可能性を頭に入れておいてください」
後者の説明を受ければ、あなたは「今の修繕積立金の金額だけで計算していいのか」「将来の値上がりを含めて予算を考えなければ」という判断ができます。
このように、同じ事実を伝えるにしても、「その事実がどんな結果をもたらすか」まで丁寧に伝えてくれる担当者こそ、あなたの利益を本当に考えている人です(中古マンション内見チェックリスト38選|プロが見るべきポイントを完全解説)。
複数の不動産会社を同時進行するのはおすすめしない
「いろんな会社の意見を聞いてから決めたい」という気持ちはよくわかります。
高額な買い物だからこそ、一つの会社だけを信じていいのか不安になる。他にもっと良い提案をしてくれる会社があるかもしれない。そう思うのは自然なことです。
ただ、複数の不動産会社に同時並行で相談を進めることは、実際にはデメリットの方が大きいです。
まず、情報が混乱します。
A社からもらった情報とB社からもらった情報が混在し、何が正しいのかを自分で判断しなければならなくなります。それぞれの担当者が異なる視点で物件を見ているため、意見が食い違うことも多く、かえって判断が難しくなります。
次に、言った言わない問題が起きやすくなります。
「A社と話したことをB社にも話したと思っていた」というような混同が起き、後になって「そんな説明は受けていない」というトラブルに発展するケースがあります。
さらに、担当者のモチベーションが下がる問題もあります。
担当者も人間です。「他の会社にも相談している」とわかったとき、正直なところ、全力で動こうという気持ちが薄れてしまう担当者は少なくありません。限られた時間の中で、自分を信頼して一緒に動いてくれるお客様に注力したいと思うのは、人として自然な感情です。
不動産の担当者とお客様の関係は、対等なパートナーシップです。
あなたが担当者を信頼して一社に絞ることで、担当者も「この人のために最善を尽くそう」という気持ちで動いてくれます。この信頼関係が、良い物件との出会いや、購入後のサポートの質に大きく影響します。
もちろん、最初から1社に絞れという意味ではありません。最初のうちにいくつかの会社に話を聞くことは有益です。ただ、「本格的に動き始める段階」では、一人の担当者に絞って信頼関係を築いていくことをおすすめします。
信頼できる担当者の見極め方
では、具体的にどうやって担当者を見極めればいいのか。
最終的には、あなた自身の「人を見る目」が一番大切です。会ったとき、話したときの感覚というのは、意外と正確なものです。
ただ、その感覚を補うための具体的なポイントを紹介します。これらはあくまで判断の補助線として使ってください(不動産会社・担当者の選び方ガイド|失敗しない中古マンション購入のための完全版)。
不動産歴2年以内の担当者は経験不足の可能性が高い
先ほどお伝えした「想像力を働かせた懸念の説明」というのは、経験値から来るものです。
どれだけ多くの取引を経験したか、どれだけさまざまな物件の問題点を見てきたか。この積み重ねがなければ、懸念の先にあるリスクを想像することは難しいです。
一般的な目安として、不動産業歴が2年未満の担当者は、まだ経験が浅い可能性があります。もちろん2年以上であれば必ず良いというわけではありませんが、経験年数は一つの目安になります。
担当者に「不動産の仕事を始めてどれくらいになりますか?」と聞いてみることは、決して失礼ではありません。あなたが大切な買い物をする相手を確認するための当然の質問です。
業務委託スタイルの担当者は慎重に
不動産会社には、正社員ではなく業務委託契約やフリーランス契約で働いている担当者がいます。
業務委託の担当者が必ずしも悪いわけではありません。ただし、いくつかの注意点があります。
責任の重みが正社員とは異なります。いつでも他の会社に移れる立場であるため、長期的なサポートという観点では不安が残ることがあります。また、情報の共有や更新が組織的に行われていないため、最新の情報を持っていない可能性もあります。
担当者が正社員かどうかは、直接聞いてみることができます。
「正直不動産です」と大きく謳っている会社は少し注意
これは少し逆説的に聞こえるかもしれませんが、ホームページや広告で「私たちは正直な不動産会社です」と前面に押し出している会社は、少し注意が必要です。
現代において、正直であることは当たり前のことです。それをわざわざ大きく主張しているということは、裏を返せば「そうではない会社が多い業界だ」という認識から来ている可能性があります。あるいは、それを売りにしなければ差別化できないと感じているということかもしれません。
もちろん、本当に誠実な会社がそう表現していることもありますので、一概には言えません。ただ、「正直不動産」という言葉だけを信じて安心するのは早計です。
スタッフ紹介写真が全員ガッツポーズの会社は少し注意
これは直感的な話になりますが、ホームページのスタッフ紹介欄で、全員がガッツポーズをしていたり、いかにも体育会系・ゴリゴリ営業系の雰囲気が漂っている会社は、クロージング重視の営業文化がある可能性があります。
もちろん、こういった会社の担当者が全員悪いわけではありません。接客態度は良かったりすることも多いです。優柔不断で背中を押してほしい方には向いているかもしれません。
ただ、「とにかく早く契約を取る」ことを優先する文化の会社では、あなたの懸念を丁寧に説明してくれることより、早期成約を優先する可能性があります。
オンライン対応しか提案しない担当者は慎重に
今の時代、オンラインでのやり取りが増えています。それは効率的で便利です。
ただ、不動産購入においては、可能な限り担当者と直接会って話すことをおすすめします。
対面では、相手の表情、話し方、声のトーン、間の取り方など、言葉以外の情報をたくさん受け取れます。これが人を見る上で非常に重要な情報です。
「できる限りオンラインで」という姿勢の担当者より、「できる限り会って話しましょう」と提案してくれる担当者の方が、誠実に向き合おうとしている姿勢が感じられます。もちろん、状況によってオンラインで完結するものもありますし、オンラインを一概に否定するわけではありません。バランスの問題です。
内見時に資料を持参しない担当者は注意
説明しようという意識のある担当者は、言われなくても内見時に一定の資料を準備してきます。
物件の重要事項に関する資料、周辺環境のデータ、管理組合の情報など。これらを自分から準備して持ってくる担当者は、「あなたに必要な情報を提供しよう」という意識があります。
一方、何も持ってこず、聞かれたことだけ答えるというスタイルの担当者は、サービスの質という観点では物足りなさを感じることがあるかもしれません。
不動産契約の解除経験について聞いてみる
これは少し踏み込んだ質問になりますが、担当者に「これまで不動産契約が解除になった経験はありますか?」と聞いてみることをおすすめします。
不動産の契約解除は、そう頻繁には起こりません。私自身、10年以上不動産の仕事をしていますが、解除件数はゼロです。それでも、やむを得ない理由で解除になることはあります。
解除の主な理由は2つです。住宅ローンの審査否決による解除と、違約金が発生する解除です。
どちらの理由であっても、それ自体の良し悪しはありません。大切なのは、解除に至った経緯と、それに対して担当者がどう対応したかです。その話を聞くことで、担当者の誠実さや対応力が垣間見えます。また、万が一自分の購入でそういう事態が起きたときに、どう動いてくれるかのイメージを持つことができます。
レスポンスが遅い担当者は要注意
これはシンプルですが、非常に重要なポイントです。
問い合わせや質問をしたとき、担当者からの返信が遅い場合は注意が必要です。営業中のお客様に対してレスが遅いということは、契約後はさらに遅くなる可能性が高いです。
不動産の手続きは時間との勝負になることがあります。物件の申込み、ローンの審査、書類の提出。これらをスムーズに進めるためには、担当者との連絡が迅速に取れることが大切です。
ほとんどの担当者はレスが早いので、逆に言えば「遅い」と感じた時点でそれはシグナルです。早めに判断することをおすすめします(不動産屋の担当からの返信レスが遅すぎるときの対処方法!レスが遅いのは普通なのか)。
質問への回答が曖昧な担当者は注意
物件について質問したとき、担当者の回答が曖昧であることが続く場合は注意が必要です。
ただし、曖昧な回答が全部悪いわけではありません。その場ですぐに確認できないことは「調べてから回答します」と言う方が、むしろ誠実です。
問題なのは、「たぶん大丈夫だと思います」「そのあたりは問題ないはずです」というように、確認もせずに曖昧な答えで終わらせようとする担当者です。
「わからないことはきちんと調べて回答してくれるかどうか」。これが、担当者の誠実さを測る一つの基準になります。
まとめ
不動産購入において、担当者選びは物件選びと同じくらい重要です。いや、場合によってはそれ以上かもしれません。
どれほど良い物件に出会えても、担当者の質が低ければ、見えないリスクを抱えたまま購入してしまうことがあります。逆に、信頼できる担当者に出会えれば、多少条件の難しい物件でも、適切な判断材料を提供してもらいながら納得のいく選択ができます。
この記事でお伝えしたかった最大のポイントは、「想像力を働かせた懸念の説明ができる担当者かどうか」です。事実を伝えるだけでなく、その事実があなたの人生にどんな影響を与えるかまで伝えてくれる担当者こそ、本当に信頼できるパートナーです。
担当者を選ぶ際は、経験年数・レスポンスの速さ・内見時の準備・質問への対応など、具体的な行動から判断してください。そして、一度信頼できると感じた担当者には、1社に絞って誠実に向き合うことをおすすめします。
中古マンションの購入は、人生の大きな決断です。その決断を支えてくれる担当者との出会いが、あなたの不動産購入を成功に導く最大の鍵になります。
この記事が、良い担当者との出会いと、後悔のない不動産購入の一助になれば嬉しいです。
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