「家を買いたい」という気持ちが固まったとき、多くの方が最初に考えるのは「自分はいくら借りられるか」という上限の問題です。
しかし、私が不動産の現場で多くの方の購入相談に携わってきた経験から言うと、「借りられる上限」と「無理なく払い続けられる金額」は全く別の話です。
住宅ローンは審査が通れば借りられます。しかし、審査が通っても毎月の返済が家計を圧迫し、生活が苦しくなってしまっては本末転倒です。
手取り30万円という収入水準は、厚生労働省のデータによると日本の平均的なサラリーマンに近い水準です。その水準で、住宅ローンの月々の支払が10万円というのは現実的なのか。国の統計データと現場での経験を組み合わせながら、正直にお伝えします。
「買いたい」という気持ちに冷水を浴びせることが目的ではありません。正確な情報を持った上で、後悔のない判断をしていただくことが、この記事の目的です。
- 手取り30万円程度で不動産購入を検討している人
- 賃貸をやめて購入しようと考えている人
- 住宅ローンの月々の支払額が自分に合っているか知りたい人
はじめに:「買えるかどうか」より「無理なく払い続けられるか」が大切
「家を買いたい」という気持ちが固まったとき、多くの方が最初に考えるのは「自分はいくら借りられるか」という上限の問題です。
しかし、私が不動産の現場で多くの方の購入相談に携わってきた経験から言うと、「借りられる上限」と「無理なく払い続けられる金額」は全く別の話です。
住宅ローンは審査が通れば借りられます。しかし、審査が通っても毎月の返済が家計を圧迫し、生活が苦しくなってしまっては本末転倒です。
手取り30万円という収入水準は、厚生労働省のデータによると日本の平均的なサラリーマンに近い水準です。その水準で、住宅ローンの月々の支払が10万円というのは現実的なのか。国の統計データと現場での経験を組み合わせながら、正直にお伝えします。
「買いたい」という気持ちに冷水を浴びせることが目的ではありません。正確な情報を持った上で、後悔のない判断をしていただくことが、この記事の目的です。
データで見る「手取り30万円」の現実
住宅ローンの月々の支払額が妥当かどうかを判断するためには、まず「手取り30万円」という収入がどういう位置づけにあるのかを、客観的なデータで確認しておくことが大切です。
感覚や憧れではなく、実際の数字を見ることで、自分の状況を客観的に把握することができます。「みんなが家を買っているから自分も」という感覚的な判断より、データに基づいた判断の方が、後悔のない選択につながります。
令和6年の平均賃金データ
参考URL:厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況
厚生労働省が発表した令和6年賃金構造基本統計調査の結果によると、一般労働者の平均賃金は男女計で33万円、男性36.3万円、女性27.5万円となっています。
これは残業代や休日出勤手当を除いた額面賃金です。所得税・社会保険料などで約20%が差し引かれると、実際の手取り額は男女計で26万円程度になります。
つまり「手取り30万円」という水準は、日本の平均的なサラリーマンと比べると、やや高めの位置づけにあります。「自分は平均的な収入」と思っていても、実際には平均より少し上のゾーンにいることが多いかもしれません。
令和6年の平均的な生活費
参考URL:家 計 調 査 報 告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要
総務省統計局の2024年度の家計調査報告によると、二人以上世帯(平均世帯人員2.88人、世帯主の平均年齢60.4歳)の1ヶ月の平均生活費は約30万円です。
この数字が示すのは、二人以上の家族で生活する場合、生活費だけで30万円程度かかるという現実です。手取りが30万円で生活費が30万円であれば、住宅ローンの支払いを上乗せする余裕はほとんどないという計算になります。
一人暮らしの場合の生活費
一人暮らしの場合は状況が変わります。
生活スタイルや居住エリアによって個人差は大きいですが、一人暮らしであれば月の生活費を20万円以下に抑えられているケースが多いです。
手取り30万円から生活費20万円を引くと、残り10万円が住宅ローンに充てられる計算になります。一人暮らしであれば、月10万円の住宅ローン支払いは、数字上は成立する可能性があります(30代、40代の単身女性の中古マンション購入 100人以上から聞いた購入動機)。
データから見た結論
客観的なデータを整理すると、以下の3パターンに分かれます。
一人暮らしで自分だけの生活費を賄う場合は、月10万円の住宅ローン支払いが成立する可能性があります。夫婦で暮らす場合に、一人の収入(手取り30万円)だけで生活費とローンを賄おうとすると、物理的に厳しい可能性があります。子どもがいる家族で暮らす場合も、一人の収入では物理的に足りない可能性が高いです。
手取り30万円で組める住宅ローンの額
「実際にいくら借りられるのか」という具体的な数字を確認しておきましょう。
借りられる上限を知ることは重要ですが、それがそのまま「借りるべき額」ではありません。上限いっぱいに借りることのリスクも含めて理解した上で、判断してください。
年収と借入可能額の計算
手取り30万円の場合、額面(税引き前)はおおよそ37万円〜40万円程度になります。
37万円と仮定すると、年収は444万円となります。
住宅ローンの借入可能額は、借りる金融機関や商品によって異なりますが、おおよそ年収の7〜8倍程度が一般的な目安です。年収444万円の場合、借入可能額は3,500万円程度になります。
3,500万円を35年・変動金利0.5%程度で借りた場合の月々の返済額は、約9万円台になります(家を買う年収はいくら必要?年収の何倍借りれる?8倍?現実的な年収 審査金利 返済比率について)。
マンション購入の場合は管理費・修繕積立金も加算される
ここで重要なのが、マンションを購入する場合は住宅ローンの返済額だけが月々の負担ではないという点です。
管理費と修繕積立金が毎月発生します。物件によって異なりますが、合わせて2万5,000円程度になることが多いです。
月々のローン返済額9万円台に管理費・修繕積立金の2万5,000円を加えると、月々の合計負担は11万円を超えることになります。
手取り30万円から11万円以上が住宅関連費用として出ていくと、残りは19万円以下。一人暮らしなら何とかなる可能性がありますが、家族がいる場合は生活費が足りなくなる可能性が高いです。
手取り30万円で住宅ローン10万円を実現する5つの方法
「数字上は難しいかもしれないけれど、どうしても購入したい」という場合に活用できる選択肢をお伝えします。
どの方法にも条件とリスクがあります。「できそうな方法」を選ぶのではなく、「自分の状況に本当に合っているか」を冷静に判断した上で検討してください。
ボーナス返済を活用する
「ボーナス返済」と聞くと、「自分にはボーナスがない」「一度に大金を払わないといけないイメージ」を持つ方が多いですが、実際は多くの銀行でボーナス返済は年間10万円から設定できます。
半年に1回5万円をボーナス返済として設定するだけで、月々の返済額を約9,000円程度下げることができます。
ボーナスが毎年必ずある職種の方や、貯金から年2回の追加返済ができる方には、月々の負担を軽減する現実的な方法です。
ただし、ボーナスが減る可能性がある職種や、不安定な収入の方には、ボーナス返済への依存は注意が必要です(年収600万円で住宅ローン5,000万円はきつい?簡単に月支払額を下げる方法!ボーナス支払は神制度!)。
戸建てを選ぶ
マンションではなく戸建てを選ぶことで、管理費・修繕積立金の月2万5,000円程度の負担がなくなります。
同じローン返済額でも、戸建ての方が月々の総負担を抑えられるという点は見逃せない違いです。
ただし、戸建ては建物のメンテナンス費用が自己負担になるため、修繕のための積立を自分で行う必要があります。月々の支出が減っても、その分を積み立てておく意識が必要です。
夫婦共働きを前提にした返済計画を立てる
二人以上の世帯で、一人の収入だけで返済しようとすると数字が成り立たない場合、夫婦二人の収入を合わせた返済計画を立てることで一気に選択肢が広がります。
ペアローンや収入合算という選択肢があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。どちらが自分たちの状況に合っているかは、個別の収入状況と将来の計画によって異なります。
ただし、一方が収入を失った場合のリスクも考慮した上で、余裕を持った返済計画を立てることが重要です(住宅ローンでペアローンと収入合算の違い、メリットとデメリットまとめ)。
頭金を用意して借入額を減らす
頭金を多く用意することで、借入額を減らし、月々の返済額を抑えることができます。
目安として、100万円の頭金で月々の返済額は約2,500円下がります。月1万円の返済額を下げるためには、400万円程度の頭金が必要になる計算です。
頭金を増やすためには時間が必要ですが、購入時期を少し遅らせてでも頭金を貯めておくことが、長期的な返済の安心感につながります(不動産購入の初期費用(諸費用)の計算 手付金 頭金の相場 頭金実質0円の仕組みを解説)。
副業で収入を補う
副業で月の収入を補う方法は選択肢の一つですが、積極的におすすめできる方法ではありません。
副業収入は安定性に欠けることが多く、住宅ローンの返済計画の前提に組み込むことにはリスクがあります。本業の収入だけで返済が成り立つことを基本として、副業収入はあくまで余裕を生むための補足的な位置づけにとどめておくことをおすすめします。
手取り30万円で月10万円以上の住宅ローンをおすすめできない人
以下に当てはまる場合は、月10万円以上の住宅ローン支払いは慎重に判断することをおすすめします。
住宅ローンの支払いが手取りの3分の1を超えている方は、生活費の圧迫が起きやすくなります。手取り30万円の3分の1は10万円です。管理費・修繕積立金を含めると11万円以上になる場合、すでにこの基準を超えています。
二人以上の世帯で、一人の収入のみで生活している方も注意が必要です。将来的に収入が増える見込みが固い場合はともかく、現時点での収入だけで判断すると、生活費が不足する可能性があります。
まとめ
手取り30万円という収入水準で、住宅ローンの月々の支払いが10万円というのは、一人暮らしなら成立する可能性がありますが、二人以上の世帯では一人の収入だけで賄うことは厳しい状況になりやすいです。
この記事でお伝えしたかった最も大切なことは、「借りられる額ではなく、無理なく払い続けられる額を基準に判断する」ということです。
住宅ローンは35年という長期にわたる返済です。今は大丈夫でも、子どもの教育費・親の介護・自分の病気など、予期しない支出が発生することがあります。余裕のある返済計画を立てることが、長期的な生活の安定につながります。
将来的に収入が確実に増える見込みがあるなら、今のうちから少し背伸びして購入することも選択肢の一つです。しかし、無理をして買って毎月の支出が苦しくなるくらいなら、購入のタイミングを見直すことも大切な判断です。
「家を買うこと」が目的ではなく、「豊かな生活を送ること」が目的のはずです。住宅ローンが生活の足かせにならないよう、冷静に数字と向き合った上で判断してください。















